くじびきアンバランス

TVアニメーション くじびきアンバランス に関する極々私的なコメント     大場★打太

●はじめにと、一くじ目

 思い起こせば、最初に当方へもたらされた情報は、敬愛するアニメ監督・望月智充氏が、所属する亜細亜堂制作の新作アニメーション
「くじびきアンバランス(以降、くじアンと略)」第2話の絵コンテを担当するというものであった。更に、色彩設計は、「絶対少年」にて、
淡い色調で落ち着きのある調和のとれた世界観をもたらした一瀬美代子さん。しかも、その監督は、小生のお気に入り作品「xxxHOLiC」にて、
その力量を存分に発揮された水島努氏。(ちなみに、HOLiC第十八話「ホオズキ」は一見の価値有り)
 
 ああ‥それならば、兎にも角にも観ておかねばなるまい‥ということになった。

 とまあ・・それくらいの気持ちで第一話(一くじ目)を観せていただいたのだが、初見時‥その出来映えに驚かされた。とりわけ印象に残ったのが、
名機(迷機?)山田メカが活躍するシーン‥小雪を追いかけ回して縦横無尽に移動し、最後は壁を破壊して、生徒会室に突入!
 とにかく、動かすところは動画枚数をかけて、良く動かしていた〜。しかも、作画がすこぶる丁寧。これって、京アニクオリティに対抗して、
亜細亜堂クオリティって呼んでもいいくらいに感じられた。
 かつて、芝山努・小林治御大など、あの偉大なるAプロで活躍された面々にて創設されたアニメスタジオ「亜細亜堂」。
その血が脈々と受け継がれている為であろうか‥、アクションの見せ方、人間の動作・仕草の描写等のアニメート技術には、流石というものを感じさせる。

 後に入手したアフタヌーンの十一月号付録の小設定資料集にて、知ったのだが…、そのインタビュー記事の中でキャラデザイン/総作画監督の
柳田義明氏が「命を削って頑張ってます…」と述べていたが、なるほどなぁ‥と、頷かされた次第である。

 購入したDVD第一巻にて、一くじ目を改めて観て気付いたが、千尋の初登校の朝、カラスの糞が靴に…。あっ、これって最終話のあのカットに
繋がっているんだって(笑)。

●二くじ目
「やくそくをまもれないとだめだ。」

 現生徒会から課せられる試練の始まり。購買部の販売、ネズミを識別してレーザーをお見舞いする招き猫型メカの派手なアクションシーンや
攻撃を受けて逃げまどう蓮子(髪が焦げるカットの描き方も絶妙)、デコピンで撃破する副会長など‥相変わらず、作画はすこぶる安定していて・・
この調子(クオリティ)で進行していくならば、いいんじゃないかなぁ…と感じた。
 
 望月監督がお手伝いでコンテに参加していた。氏らしく、独特のレイアウトやカット割り・タイミング、カメラワークで、ドラマを組み立てていく
巧さは随所に感じられた。あまり無茶な(冒険心あふれる?)演出は指示していなかったようにも感じられたが…、いわゆる望月演出健在を
アピールしていたように思える。
 ドミノ倒しのシーンを観ると、監督の作品「ふたつのスピカ」での、入学試験が思い出されたなぁ。ただ、蓮子や山田のサービスカット(?)が
あったりしたので、パ●チラ(orパ●モロ)演出家のレッテルを貼られないか・・それだけが心配じゃのう‥(汗)。

●三・四くじ目

 前話(三くじ目)「きょうだいがたいへんだ。」は、千尋の姉・忍(数学教師で、元レディースのヘッド?)のブラコン(ショタコン?)振りが、
やたらはじけていた超ドタバタの回。冒頭、想像力をかき立てられる‥ちょっとヤバめのカットもあったし、忍の妄想カットの作画も凄かったー。
しかも、小雪ちゃん‥反則なまでに、可愛い過ぎだよ。

 一転して、四くじ目「にちようびにあそぼうか。」は、冒頭の、蓮子・下僕でみくる声の薫子(改造人間なのか‥?)絡みのどたばたはお約束として・・、
後半は、幼なじみの千尋、時乃、律子の関係に細やかに触れたしっとりとした趣のある展開となっていた。くじアンファンの評判も、よろしい回のようである。
 律子は幼き日々のことを決して忘れていた訳ではなかったー・・ってところが、嬉しかったなぁ。相合い傘(?)の千尋と律子の後ろ姿に、
ちょっと嫉妬にも似た不安げな表情を見せていた時乃の様子が、今回の小生的なツボなり。
 さて、あの三人の関係はどうなっていくのか‥興味津々。いよいよ「くじアン」の展開から目が離せなくなってきたぞ・・・。

●五くじ目
「ともだちがかわるかもしれない。」

 蓮子は、意外にも、両親に溺愛されて育てられた、いわゆるお嬢様であったというのがキモの話か‥。性格が全く異なる‥蓮子と時乃の衝突。
この回は、可憐な小雪ちゃんが、何気に良さげな役割を演じていた。一人で旅行準備をする小雪の態度‥可愛かった。超能力で、無人島へ飛ばされた
みんな。そうした状況の中で、頑なな蓮子の心が徐々に解きほぐされていく展開が何気に感動的でもあった。
 作画的見所的は、蓮子と時乃の追いかけっこのシーン。よく動いていて、マジ凄かったなー。延々走っていっちゃうので、びっくりしちゃったよー。

●六くじ目
「ぜったい、ないしょにしておこう。」

 下僕・山田のセクシーショットのサービスもあったのだが、小雪のアクション(超能力)シーンがとりわけ印象に残った。掛け値なしに、
こりゃ「スゲー!」って心の中で叫んじゃったよ・・小雪ちゃんが、宇宙人のロボと円盤を一撃で撃破しちゃったシーン。面白すぎるよ〜。
くじアン的超展開と呼んでおこう。
 こうした生理的快感を感じさせる、作画・演出の良さも見逃せない作品‥くじアン恐るべし。レイアウトとりがしっかりしていて、
基本的なキャラクターの動作がきちんと描けているのは言うまでもない。

 まだ十代なのに、おばさんとか呼ばれてた小雪の姉・小牧が素顔を現した。次回、隠密霧隠として、見事な‥はみ乳を披露しちゃうんだよなぁ・・(汗)。

●七くじ目
「えらいひとのはなしをきく。」

 脚本は、木尾士目氏。後に時乃と親密になる特殊部隊R3S・橘いずみ登場(正確には二話で1カットだけ、登場していた)。蓮子が用意した、
おとり用の、北酒場三郎のド演歌三万曲収録の●ポッド‥なんだか知らないが凄げー。
 印象に残ったのは、副会長の冷徹さと圧倒的な強さ。妖刀新月でいずみを組み伏せると、「どうするのだ・・時乃・・」って問う・・
あまりに格好良すぎるよー。事の顛末を知った会長の苛立ちの言葉・口元の表情もインパクトがあった。

●八くじ目
「むかしのことをわすれている。」

 りっちゃんの誕生日と衝撃の婚約発表のエピソード。
 あの婚約者・織部って、つかみ所のないキャラ。いかにも…の金持ちのおぼっちゃまなんだけど、人がいいんだか、軽い人間なのか‥
はたまた、実は賢くて腹黒い奴なのか・・まだよく分かんないなぁ。
 一見、親父に従順な律子の本音・本心もどうなのかなぁ。極端な無口キャラだけに推量するしかないが。

 意外と豊満な律子の‥ドレスへのお着替えのサービスカットもあったが‥、比較的オーソドックスな演出で固めている印象の回であった。 
とはいえ、手のちょっとした演技だとか、些細な仕草や口元の表現等に、キャラの微妙な感情を込めたりしていて工夫をこらしているのが見て取れた。
 作画に関しては、ちょっと微妙なカットもあったけど・・、りっちゃんの正面顔って、描き方次第では、のっぺり平面っぽく見えちゃうみたいで、
けっこう顔UPで画面をもたせるのは、難しそうに感じちゃった(汗)。

●九くじ目
「はなびがきれいにみえた。」

 全編を通じて、静と動・緩と急のメリハリがきいていて‥、とにかく小生的には、トップクラスにおもろい回である。蓮子と山田の絡みも充分楽しめたし。
 
 めぞん一刻の四谷さんのように壁の穴から登場した山田。人型ロボを制作している蓮子に怒って、暴走する彼女のはじけっ振りが、
実に愉快。牛乳のやけ飲み、一人暴走族やら、池の中からのジャンプやら・・。しかも台詞(暴言?)がいちいち気が利いてた。
「あのあばずれ・・」「痴話げんかはやめろ・・」「夜のお相手もします」等々・・には、大笑いさせられた。
 中の人、後藤邑子さんのマシンガントーク炸裂。舌をかまないのかなぁ‥なんて、マジに心配しちゃったよ(汗)。

 そういや、確かに山田は自分のことを「生身の人間…」って言ってた。でも、ロボットならともかく、生身の人間を改造しちゃうって方が、
よっぽど罪深いような…。恐るべし蓮子さま。
 
 EDでは、関根氏の画の合わせて、見事なまでに花火が合成されていた。花火が湖面にもしっかり映っていたのにも驚かされた。
デジタルアニメの技術の進歩って、凄いなぁ。

●十二月十一日の日記より抜粋
 
 「くじアン」のキャラって、キャラ・デザの柳田氏が、デザインされるにあたって、「極力線を減らしました…」ってインタビューにて述べて
いたけれど、それ(動かしやすい比較的シンプルなキャラ)って・・逆に言うと、描く人(アニメーター)の力量が如実に画面にストレートに
反映されるってことにもなるので、それはそれで大変かなぁ‥などと、つい思ってしまう(汗)。

●十二くじ目(最終回)

 前回、「会長は堕落した・・」との名言(?)を吐いた、副会長の恫喝にあったりして・・、ついに、会長候補辞退を決意する千尋。
それを止めることができない時乃や他の面々達の苛立ち。流石の蓮子も困惑して、落ち込んでいたなぁ。思いあまって律子に相談(直訴)。
会長VS副会長の文字通りの真剣勝負。そして、留学を決意して、ヘルメットを脱いだ、律子と千尋の、つかの間のデート(のようなもの‥)。
にぎにぎしい新生徒会役員就任式典で、大団円なのか・・(?)。
 いわゆるくじアン的な超展開はなくって‥、まずまずまとまった最終回となっている印象。生徒会候補の活動を通じて、小雪ちゃんも含め、
成長していった面々の今後に期待かな・・。でも、千尋の不運は続きそう・・とはいえ、あの糞オチはないんじゃないかなぁ(笑)。

 それにつけても、どん欲なようだが、まだ食い足らないというか‥もう1クール分の話数が欲しいなぁ‥というのが正直な感想かなぁ。
各メインキャラ一人一人をもっと掘り下げるエピソードなんてのも観てみたいような気がするし。追加エピソードのOVAとか制作されないのかなぁ。

●オープニングアニメーション

 書き漏らしていたが・・、レイアウト・カメラワーク・色調・タイミング等々、工夫を凝らしていて小生的に評価の高い‥OPアニメに関して‥
ちょっと一言。
 お気に入りその1は、冒頭辺りの2カット。手前のBOOKと背景を逆方向に引いて‥時乃、律子を見せるカット。キャラを際立たせて
独特の立体感を感じさせる演出というか撮影方法は、アニメ特有の見せ方じゃないかなぁ。
 その2は、ピーちゃんを追いかける幼き日の三人。俯瞰からロングショットで三人を追っていて、遅れ気味のりっちゃんが
フレームアウトしそうになるところで‥ボテッところんじゃうカット。なんか微笑ましくて可愛らしくって、毎回見る度に、にやけちゃうヨ。
  
 最後に、こんな素敵な作品を創り出してくださったアニメ制作スタッフの方々に、心から
御礼を申し上げて・・、今回のコメントを打ち止めとさせていただくこととする。
 
 とりとめの無い文章にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
                (了)

くじびきアンバランス   (二〇〇六年十月〜 全十二話)
●メインスタッフ

原作:木尾士目
監督:水島努
シリーズ構成:横手美智子
脚本:横手美智子、浜崎達也、雪崎密林、
花村こけし、木尾士目、水島努、門田祐一
キャラクター原案:木尾士目、八雲剣豪
キャラ・デザイン/総作画監督:柳田義明
プロップデザイン:大畑晃一、宮脇謙史
美術設定:泉寛
美術監督:奥井伸
色彩設計:一瀬美代子
アニメーション制作:亜細亜堂
製作:立橋院学園生徒会

■オープニングアニメーション
絵コンテ/演出:水島努
作画監督:柳田義明
原画:西岡夕樹 遠藤江美子 高橋美和 
   青野由果 後藤潤二 仲澤崇仁 
   亀谷響子 植村淳 赤城博昭 大城勝


■エンディングイラスト 関根昌之

 毎回、ストーリーに沿って、関根氏の異なったイラストを観ることができるのも、楽しみの一つであった。

★キャスト

榎本千尋‥瀧本富士子
秋山時乃‥野中藍
律子・K・ケッテンクラート‥小清水亜美
上石神井蓮子‥西原久美子
山田薫子‥後藤邑子
朝霧小雪‥こじまかずこ
如月香澄‥ゆかな
リサ・ハンビー‥高木礼子
榎本忍‥笹本優子
橘いづみ‥中尾衣里
朝霧小牧‥倉田雅世
六原麦男‥浅沼晋太郎
鏑木有也‥川田紳司